先日、国民投票法を中心とした講師活動を行ってきました。

憲法を変えるための手続として、憲法96条では、
 ① 衆参両議院において,総議員の3分の2以上による発議と
 ② 国民の過半数の賛成
の2つが必要とされています。
このうち、①については、現在の国会の状況を踏まえると、いつ発議されてもおかしくない状態といえます。
② についてはどうでしょうか。
国民の「過半数」の賛成が必要と聞くと、「そう簡単には実現しないだろう。」そう感じる方は多いと思います。
では、具体的に何人くらいの人数を想定しているでしょうか?
日本の人口が約1億2000万人なので、6000万人を超えれば「過半数」となりそうです。しかし、結論から言うと、6000万人を超えなくても「過半数」と言えてしまうのです。

実は、憲法上、「何の」過半数が必要であるかまでは定めておらず、国民投票法という法律で「過半数」の内容が決められています。
では、法律では、「何の」過半数と定められているのでしょうか。
「全人口の」過半数?「有権者の」過半数?答えは「有効投票数の」過半数です。

架空の事例でみていきます。全人口が1億2000万人だったとして、選挙権のある国民の人数が1億人だったとします。さらに、国民投票において、投票率が60%(6000万人が投票)だったとします。こういった投票においては、何も書かれていなかったりして無効となる票が必ず一定数存在するので、その無効票が1000万票あったとします。
この場合、「有効投票数」は、6000万票から1000万票差し引いた5000万票となります。
そうすると、この事例では、憲法を変えるために必要な「過半数」は、2500万票ということになります。つまり、賛成が2500万票を超えれば、「国民の過半数」があったことになります。

このように、憲法を変えるために必要な「国民の過半数の賛成」というのは、思っていたよりもハードルが低いと言えるのではないでしょうか。
ウクライナ情勢を受けて、国内では憲法を変えようという議論が加速しています。私たち一人一人が自分たちの憲法を変えるべきか否かについて向き合うことが重要と考えます。

(弁護士 萩原得誉)