2024年10月、ノーベル平和賞が日本被団協に授与されました。日本被団協は、被爆者(広島・長崎で原爆の被害を受けた被害者の生存者)の全国組織であり、核兵器廃絶と原爆被害の国家補償を求める運動を継続している団体です。今回、ノーベル平和賞の授賞理由の中では、核兵器使用は道徳的に許されないと烙印を押す力強い国際的な規範=核のタブーの確立に被団協が大きく貢献してきたこと、そして、そのタブーが圧力にさらされていることに触れられていました。被団協が証言を通じて核兵器廃絶を訴え続け、そして、被爆者の経験とメッセージを新しい世代が引き継ぎ、その核のタブーを維持することに貢献していることがノーベル平和賞受賞へとつながったのです。

 改めて、2024年の1年を振り返ると、戦争や紛争の絶えない1年間でした。ロシアによるウクライナ進行は続き、イスラエルによるパレスチナガザ地区への攻撃も終わりが見えません。こうした紛争の下では常に核兵器の存在が見え隠れしていました。そして、核兵器無しでも、日々、多くの人が傷つき命を奪われています。日本では、戦後○○年という言葉をよく耳にします。私たちにとっては「戦後」なのかもしれませんが、残念ながら世界では常に「戦中」である地域、人々がいるということを心にとめなければなりません。私たち自身もたまたま、日本という地域で紛争が起きていないだけであり、幸運にすぎないということを胸に刻まなければなりません。

 日本被団協の受賞の報を聞き、今ある紛争を止める、あるいは、今あるこの小さな平和を守るのは、核兵器のタブーと同じように、戦争のタブーを作っていくことではないかと感じました。日本被団協が核兵器廃絶に尽くしてきたように、草の根的に平和を訴え、戦争経験や戦争の悲惨さを次の世代に引き継ぎ、タブーを作り、それを維持していくことが必要ではないでしょうか。
 日本被団協のノーベル平和賞受賞は非常に意義深いことだと思います。同時に、目まぐるしく進んでいく日々を過ごす中で、事務所としても、平和のために我々において何ができるのか、何をすべきなのか非常に考えさせられる平和賞でした。

 2025年には、当事務所も開設50周年を迎えます。改めて、事務所として、地域において何ができるのか、何をすべきかということを考えながら節目の年を迎えたいと思います。

所員一同