弁護士1年生のときから、かれこれ17年。再審事件から引き続き、現在は国賠布川事件の弁護団の一員として、活動をさせていただいています。
開かずの扉と言われた再審の門が開き、無罪判決が確定したのは、逮捕から実に44年後。20歳で逮捕された櫻井さん・杉山さんは49歳で仮出獄を許され社会に戻ってきましたが、失われた年月は返ってきません。
人間誰でも間違うことはある、とは言いますが、「えん罪」は決して「単なる間違い」で生み出されるものではありません。そこには、明らかに無実と知りながら、あるいは無実と知る機会がありながら、そのことに目をつむり、「故意に」犯人を作り上げていく大きな力が働いているのです。これを国家の犯罪と呼ばずして何と呼べばよいのでしょうか。
今、私たちが取り組んでいる国賠訴訟は、二度とこのようなことが行われないようにすることを目的としています。国賠訴訟の中で、国は、当時明らかに偽証したことについても「忘れていただけ」、提出を求められた資料については「洪水で流されてしまって存在しない」などと、誠意のかけらもない答弁をくり返し、その責任を認めようとしません。国がこのような姿勢である限り、そしてまた、国民の税金で集めた証拠を検察官が独り占めし、犯人を仕立て上げるのに必要な証拠しか法廷に提出しなくてもよい、という今の裁判ルールが変わらない限り、えん罪事件はなくなりません。
国賠訴訟を通じ、国の責任を明らかにするのと同時に、証拠に関する新たなルール作りのきっかけをつかめればと思っています。
(弁護士 福富美穂子)