つい先日、ひょんなことから13~14年前に扱った事件の記録を見る機会がありました。
相談者は一人のおばあさん。長年自分が管理している土地があるけれど、自分も高齢なので、そろそろ売却してしまいたい。ところが、その土地は、明治時代に亡くなっているご先祖様の名義のままとなっているので、どうしたら良いのだろうか・・という内容でした。聞いてみると、そのご先祖様の代から現在に至るまで、どこかで遺産分割が行われたり、遺言書が遺されていたという記録も記憶も一切ないとのこと。

ご依頼を受けてから、ご先祖様から現在までの相続関係を調べたところ、かつての家督相続も含めて世代にして五代にわたる相続が生じており、その途中には、なぜか戸籍に身分事項が書かれていない(誕生の記載も死亡の記載もない)明治生まれの相続人がいたり、相続人が一人もいない状態で既に亡くなっている相続人がいたり・・。
前者の相続人に関しては、失踪宣告を申し立て、後者の相続人に関しては、相続財産管理人の選任を申し立て・・、受任から足かけ3年かけて、ようやくその土地をおばあさん単独の名義にすることができました。依頼者のおばあさんも、途中で諦めずに、よく最後までがんばってくださいました。

相続が発生した時、相続人間で遺産の管理や使用状態に特段異議がない場合や、相続人間での遺産分割のもめ事を避けたい場合等、面倒な遺産分割協議や名義変更を後回しにしてしまうことが良くあります。今回のケースは、あまりに後回しにしすぎたケースかも知れませんが、時間が経つことによって、相続関係が複雑になり、必要な時に名義を変えることが非常に難しくなってしまいます。早め早めの対応が大切ですね。

(弁護士 齋藤雅子)