まさかこんな事になるとは…。

私の母が弁護士に依頼することになった3年半前の出来事をお話しします。

そもそもの問題は、遡ること約50年前、私の祖父名義の土地(自宅の敷地の一部)に親戚が家を建てたことに端を発します。親戚関係ということもあり、当然契約書面などはなく、口約束のみで祖父は土地を貸すことになりました。毎年暮れになると、その親戚は、お歳暮のみかん一箱と「地代」を持って我が家を訪れていました。

時は流れ、祖父が亡くなり、母がその土地を相続しました。家を建てた親戚(借地人)も亡くなりました。問題はここからです。「地代」があまりにも低額だったことに不満を持っていた母は、何も考えずに借地人の相続人に対して地代の値上げを提案します。いきなりの値上げだったこともあり先方はこれを拒否しました。

年末年始に帰省した際、母が私にこんな事があってね…と値上げの話を打ち明けてきました。「ちょっ、ちょっと待って。弁護士さんに相談してみようよ。」と母に告げ、早速相談予約を入れ、弁護士に法律相談をしました。
弁護士からは、「固定資産税程度の金額というと、賃貸借ではなく、使用貸借にあたるのではないか。値上げしていたら完全に賃貸借契約だけれど、今の状況だと使用貸借では。」とのアドバイスを受けました。

賃貸借契約と使用貸借契約の違いは、有償か無償かの違いです。
賃貸借契約では、借主は極度に保護されます。一方、使用貸借契約では、当初決められた返還時期に終了、返還時期の取り決めがなければ契約に定めた目的に従って使用を終わった時期で契約は終了、どちらの約束もなければ、貸主はいつでも目的物の返還を請求でき、さらに、借主の死亡でも終了します。
この違いは大きな違いです。
今回のケースでは、「地代」は支払われていますが、固定資産税額程度。そういった場合は裁判所でも使用貸借と判断されているそうです。

弁護士からのアドバイスを受けて、「地代」金額は据え置きということで、借地人の相続人との使用貸借の契約書を新たに交わすべく動き始めましたが、先方からは「地代」を支払っているので賃貸借契約だとして、拒否されました。まあ、ありがちな展開ですよね。
当の本人達はすでに亡くなっているし、母としては土地を使用するのは構わないけれど、将来老朽化した建物が残ってしまうことを危惧している、先方は返還請求をされるのを心配しているという状況で、話し合いは平行線のままでした。
もう母や私の手に負えなくなってしまい、相談をした弁護士に内容証明の文書作成を依頼し、引き続き交渉もお願いしました。
先方からの回答の手紙を読んだ時には言葉に言い表せない気持ちなりました。きっと、事務所にいらっしゃる相談者や依頼者の方達もつらい思いをされているのだろうな…と想像したりして、その夜は一睡もできませんでした。

さてさて、この問題がどうなったかと言いますと、あまり長引かせたくないと考えた母の意向もあり、借地人の相続人が測量、登記費用を負担し分筆した上で、土地を無償譲渡するという提案をして、先方も承諾。無事に解決の運びとなりました。
土地の面積は減りましたが、建物の処分に関する心配がなくなった事、なにより問題を次の代に引き継ぐことなく母の代で解決できたことで、本当に良かったと家族一同喜んでいます。福富弁護士、その節はお世話になりました。

長くなりましたが、我が家のケースのように、親子、兄弟、親族、友人間の不動産の無償貸借などは、当事者が亡くなり、相続が発生した時などに問題が起こりやすいと思います。是非、契約書を作成するなど後々トラブルとならないように対応策を検討されてみてはいかがでしょうか。
もちろん、当事務所でもご相談に応じます。

(事務局 村山)